ニュルンベルクの記録 - ドイツの舞台 | 石井裕一 - オフィシャルサイト
石井裕一 ニュルンベルク州立劇場の壮大なステージにて
arrow_backDer unsichtbare Reaktor

ニュルンベルクの記録

ドイツの舞台に立つ

ニュルンベルク州立劇場 / 2022年5月

— ニュルンベルク州立劇場

ドイツ演劇界の殿堂

石井裕一 ニュルンベルク州立劇場の壮大なステージに一人立つ

ニュルンベルク州立劇場(Staatstheater Nurnberg)は、ドイツ・バイエルン州ニュルンベルクに位置する、ドイツ語圏で最も格式の高い劇場の一つである。1905年に開館し、オペラ、バレエ、演劇、コンサートの4部門を擁する総合芸術機関として、120年以上の歴史を持つ。

「州立劇場」(Staatstheater)の称号は、ドイツでは国家が運営する劇場にのみ与えられる。バイエルン州政府が運営費の大部分を負担し、芸術的な自由と財政的な安定を両立させている。この劇場の舞台に立つということは、ヨーロッパの演劇界で正式に認められたことを意味する。

ニュルンベルク自体が文化都市としての深い歴史を持つ。アルブレヒト・デューラーの故郷であり、リヒャルト・ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の舞台でもある。この都市の劇場で、日本のレンタル家族業者がビデオ出演する——その事実自体が、石井裕一の人生がいかに予測不可能な軌跡を描いてきたかを象徴していた。

ドイツの由緒ある州立劇場で、日本人が舞台に立つ。国家が運営する格式高い劇場での出演は、ヨーロッパの演劇界で正式に認められた証である。

Staatstheater Nurnberg

開館

1905年

所在地

ニュルンベルク、バイエルン州

運営

バイエルン州政府

部門

オペラ、バレエ、演劇、コンサート

— ドイツへ

東京からニュルンベルクへ

福島での「代理人」としての仕事を終えた石井は、次のステップとしてドイツへ向かうことになった。福島で撮影した映像は、ニュルンベルク州立劇場の舞台で投影される。しかしそれだけではなく、石井自身もドイツに渡り、劇場のスタッフやキャストと対面することになった。

東京のレンタル家族業者が、ドイツの州立劇場に招かれる——その事実は、ヘルツォークの映画から始まった石井の国際的なキャリアの、新たな頂点だった。カンヌ映画祭のレッドカーペットを歩き、ドイツの映画館で自分の顔がスクリーンに映るのを見て、そして今度はドイツの由緒ある劇場の舞台に立つ。

石井はドイツ語を話さない。英語も流暢ではない。しかし、それは問題ではなかった。レンタル家族として培った「言語以前のコミュニケーション力」——表情、身振り、声のトーン、間合い——が、言語の壁を超えた。介護福祉士時代に学んだ「言葉を使わずに寄り添う力」が、異国の劇場でも通用した。

石井裕一の国際的キャリア

2018

ヘルツォーク監督『Family Romance, LLC』撮影

2019

カンヌ国際映画祭レッドカーペット

2021

シュトックマンの代理人として福島訪問

2022

ニュルンベルク州立劇場でビデオ出演

— 街の中で

ドイツの街角で声をかけられた日

石井裕一 ドイツの街角でファンとセルフィー。スーツ姿のスリムな出で立ち

ドイツの街角でファンに声をかけられ、セルフィーを撮る石井裕一。スーツ姿のスリムな出で立ち

石井裕一がドイツの地を踏んだのは、舞台出演のためだった。しかし、劇場の外でも石井は「有名人」だった。ヘルツォークの映画『Family Romance, LLC』がドイツでも公開されており、石井の顔を知っているドイツ人がいたのだ。

ニュルンベルクの街を歩いていると、声をかけられた。「ファミリーロマンスの映画に出ていた人ですよね?」。東京のレンタル家族業者が、ドイツの街角で映画ファンに認められる——ヘルツォークの映画がもたらした、予想もしなかった現実だった。

石井はドイツ語を話さない。しかし、言語の壁は問題にならなかった。笑顔とジェスチャーと、そして「人の心に寄り添う力」——介護福祉士時代から培ってきた、言語以前のコミュニケーション能力が、異国の地でも通用した。ファンとセルフィーを撮り、握手を交わし、言葉は通じなくても心は通じた。

日本で「他人の人生」を演じ続けてきた男が、ドイツで「自分自身」として認められた。レンタル家族としての石井は常に「誰かの代わり」だったが、ドイツでは石井裕一という個人が、映画と舞台を通じて一人の芸術家として受け入れられていた。

ヘルツォークの映画が石井を「俳優」にしたなら、シュトックマンの舞台は石井を「芸術的方法論」にした。異国の地で、石井は二つの役割を同時に生きていた。

— 仲間たち

5人のシュトックマン

person

ユリア・バルトロメ

Julia Bartolome

俳優

シュトックマンの分身の一人。感情の機微を繊細に表現する

person

ルウェリン・ライヒマン

Lewellyn Reichman

俳優

エネルギッシュな演技で舞台に動きを与える

person

モーリッツ・グローヴ

Moritz Grove

俳優

知性と葛藤を体現する役柄

person

ラファエル・ルビーノ

Raphael Rubino

俳優

内省的な演技で観客を引き込む

person

石井裕一

Yuichi Ishii

ビデオ出演

福島の映像を通じて舞台に参加する唯一の日本人

舞台では、劇作家シュトックマンが5人の分身として登場する——4人のドイツ人俳優と、ビデオ映像で映し出される石井裕一。4人の俳優はシュトックマンの「思考」「感情」「記憶」「葛藤」をそれぞれ体現し、石井は「行動」——実際に福島に行って人々に会うという行動——を代行した。

リハーサル期間中、石井とキャストの間には言語を超えた絆が生まれた。石井はドイツ語を話さないが、演劇という共通言語があった。表現を通じたコミュニケーション——それはレンタル家族として石井が毎日実践してきたことの延長だった。

一人の人間が複数に分裂し、物理的に離れた場所で同時に存在する——それはまさにFamily Romanceのビジネスモデルそのものだった。

キャスト集合写真 — ニュルンベルク
キャスト集合写真 — ニュルンベルク
キャスト集合写真 — ニュルンベルク

Rubino, Ishii, Bartolome, Reichman, Grove — Photo: Lion Bischof / Staatstheater Nurnberg

— 舞台の裏側

照明が灯る前の瞬間

舞台の裏側には、観客が決して見ることのない世界がある。衣装の最終調整、照明の微調整、音響チェック、そして出演者たちの緊張と興奮——石井はこの全てを目撃した。

ニュルンベルク州立劇場のバックステージは、120年の歴史を感じさせる空間だった。巨大な舞台機構、天井まで届く吊り物、そして何世代もの俳優たちが歩いた通路——その全てが、ドイツ演劇の伝統の重みを伝えていた。

石井にとって、バックステージの経験は「もう一つの舞台」だった。レンタル家族の仕事では、常に「本番」——クライアントの前での演技——があった。しかし舞台芸術には「準備」という重要な時間がある。照明が灯る前の沈黙の中で、石井は「表現者」としての自覚を深めていった。

舞台裏の石井裕一
舞台プレゼンテーション
舞台プレゼンテーション
舞台プレゼンテーション

Photos: Staatstheater Nurnberg

— 本番 — 2022年5月21日

バロックとテクノロジーの衝突

5つの分身——4人の俳優と1人のビデオ出演者

舞台では、劇作家シュトックマンが5人の分身として登場する。4人のドイツ人俳優が舞台上で演じ、石井裕一は巨大なビデオスクリーンの中の「代理人」として、福島の風景と人々の声を届ける。観客は、ドイツ語を話す4人の俳優と、日本語を話す1人の映像出演者の間を行き来しながら、「代理」と「本物」の境界を問われる。

バロック装飾と最新技術の対比

演出を手がけたヤン=クリストフ・ゴッケルは、華やかなバロック装飾と最新のビデオ技術を意図的に対比させた。金箔の装飾、蛍光色のマントを着た俳優がブラックライトの下で踊る——18世紀の華やかさと、原発事故の暗い現実が衝突する。

バロック様式の華美な装飾は、原発推進の楽観主義を象徴していた。「クリーンエネルギー」「技術の進歩」「豊かな未来」——原発事故以前のプロパガンダは、まるでバロック宮殿のように華やかで、そして空虚だった。その華やかさの裏に隠された「見えない原子炉」を、ゴッケルは舞台上で暴き出した。

ブラックライトと津波の波

糸のこぎりで切り出された津波の波、機械仕掛けの小道具、紙吹雪のように舞う白い紙片——物理的な小道具と、デジタルのビデオ投影が交互に現れる。そして突然、スクリーンに福島の映像が投影される。石井が撮影した現実の被災地の風景。華やかなバロック装飾と、荒廃した被災地の映像——その対比は観客に衝撃を与えた。

「見えない原子炉」——放射線は目に見えない。原発事故の影響は目に見えない形で人々の人生を変え続けている。そしてスクリーンの中の石井自身も「見えない存在」——物理的にはそこにいないのに、舞台の中心にいる。

舞台写真 — 福島映像投影
舞台写真 — 紙片が舞う芸術的ショット
舞台写真 — ドイツ人俳優たち

Photos: Konrad Fersterer / Staatstheater Nurnberg

舞台写真 — 福島投影
石井裕一 ビデオ投影
舞台写真 — ワイドステージ全景

Photos: Konrad Fersterer / Staatstheater Nurnberg

— ドイツの反響

批評界の評価

「想像力豊かな演出」

— 南ドイツ新聞(Suddeutsche Zeitung)

ドイツの最も権威ある日刊紙の一つ、南ドイツ新聞がゴッケルの演出を高く評価。バロック装飾とビデオ技術の対比、そして石井の映像出演がもたらす「不在の存在感」を特に注目した。

「鏡の迷宮」

— ニュルンベルガー・ナハリヒテン(Nurnberger Nachrichten)

地元紙は本作を「鏡の迷宮」と評した。5人のシュトックマンが互いを反射し合い、現実と虚構の境界が次々と移動する構造を指している。石井の映像は、その迷宮の中心にある「もう一つの鏡」だった。

nachtkritik.deをはじめとするドイツの主要演劇批評メディアが本作を取り上げた。代理人としての福島訪問という独自の方法論、バロック装飾とビデオ技術の対比、そして「見えない原子炉」というタイトルが示す多層的な意味が高く評価された。

批評家たちは特に、石井の映像出演が舞台に与える「不在の存在感」に注目した。物理的にそこにいない人間が、スクリーンを通じて舞台の中心に存在する——それは原発事故の「見えない」影響と共鳴する演出だった。また、「日本のレンタル家族業者がドイツの州立劇場の作品に参加する」という事実そのものが、批評家たちの想像力を刺激した。

ドイツメディア掲載写真

ドイツメディアでの報道 — Photo: Staatstheater Nurnberg

— ポートレート

ニュルンベルクの石井裕一

石井裕一 ポートレート

Photo: Rakuda Studios

石井裕一 ポートレート

Photo: Rakuda Studios

石井裕一 ポートレート

Photo: Rakuda Studios

ニュルンベルクでの公演期間中に撮影された、石井裕一のドラマティックなポートレート。レンタル家族業者から国際的な舞台人へ——その変遷を静かに物語る3枚。

Photo Gallery — Nurnberg
ニュルンベルク州立劇場ステージにて

ニュルンベルク州立劇場ステージにて

Staatstheater Nurnberg

舞台写真 — 福島映像投影

舞台写真 — 福島映像投影

Konrad Fersterer

舞台写真 — ドイツ人俳優たち

舞台写真 — ドイツ人俳優たち

Konrad Fersterer

舞台写真 — 福島投影

舞台写真 — 福島投影

Konrad Fersterer

舞台写真 — 紙片が舞う

舞台写真 — 紙片が舞う

Konrad Fersterer

石井裕一 ビデオ投影

石井裕一 ビデオ投影

Konrad Fersterer

ワイドステージ全景

ワイドステージ全景

Konrad Fersterer

ドイツの街角でファンと

ドイツの街角でファンと

キャスト集合写真

キャスト集合写真

Lion Bischof

キャスト集合写真

キャスト集合写真

Lion Bischof

キャスト集合写真

キャスト集合写真

Lion Bischof

ドイツメディア掲載

ドイツメディア掲載

Staatstheater Nurnberg